ブエノスアイレスの夜 ブエノスアイレスの夜
セシリア・ロス、ガエル・ガルシア・ベルナル 他 (2005/06/24)
アット・エンタテインメント
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監督:フィト・パエス 
脚本:フィト・パエス
   アラン・パウルス 
撮影:アンドレス・マッソン 
音楽:フィト・パエス
   へラルド・ガンディーニ 
 
出演:セシリア・ロス
   ガエル・ガルシア・ベルナル 
   ルイス・シエンブロウスキー 
   ドロレス・フォンシ 
   カローラ・レイナ 
   エクトル・アルテリオ 
   チュンチューナ・ヴィラファーネ 
   リト・クルス
 

【ネタバレしています。】

過去にアルゼンチンで起きた軍事クーデターで心に深い傷を負ったカルメンは 故郷を離れマドリードで暮らしていた。
ある日、父の危篤の報を受け、20年ぶりにブエノスアイレスへ帰国したカルメンは 家族には内緒でアパートを借りた。
聴覚だけが異常に発達してしまったカルメンは 他人と直接触れ合うことが出来ず、アパートの隣室に男女を呼び寄せ、彼らのセックスに耳を澄まし、一人性的興奮に酔いしれていた。
その時の男娼だったグスタボの声に異様に惹き付けられたマルメンは その後もグスタボを呼んでは ポルノチックな小説を壁越しに読ませ、官能の時間を送っていたが やがて二人の間には超えてはいけない関係が生まれる・・。


どこかで 「これはまさしくギリシャ悲劇だ・・」という感想を読んでいたので 映画を観始めてすぐに<近親相姦>を見抜いてしまいました!?(笑)
問題は着地点です・・。
近親相姦に行き着くまでの過程は 作品個々にドラマがあってそれぞれに趣きあります。
例えば ルイ・マル監督の「好奇心」などは 何故か爽やかさすら残る不思議な母子の近親相姦を描いた作品。
波乱のドラマというよりは 深い愛情で結ばれた母親と少年の関係が とんでもない方向に暴走していく印象があります。
何となく微笑ましくさえ感じてしまうのは そのキャラクターたちや展開の滑稽さにもあり 何よりも描く監督の個性を強く感じます。
その点で言うと この「ブエノスアイレスの夜」は内容もシビアなら 人間の「性」を「生」をリンクさせ、その関係を強く意識した作品づくりを感じます。


カルメンが他人と触れ合いない理由は 劇中で過去のアルゼンチン軍事クーデターで政治犯として捕らえられ、拷問を受けた過酷な体験かららしい・・という事情が分ります。

そして カルメンが性的満足を得る為に 様々に聴覚を駆使していることも。

そんな彼女の日常の中の 最もプライベートな部分で出会ってしまったグスタボ。

あからさまで濃い目の性描写もスペイン映画ならではですが 今はモデルを目指し男娼として活躍する若きイケメンのグスタボの声に溺れるカルメンに 波乱に富んだ人生を生き抜いてきた40代の女性の 赤裸々な生き様を見る気がします。

突っ張って孤独に耐えて生きてきたカルメンの心を溶かすグスタボの声。

やがてそれは 二人が実の親子だという衝撃的な事実に翻弄されるとも知らず 禁断の触れ合いに進んでいってしまうのですが・・。

この間のカルメンの表情の変化が見もの!!

氷が融けるが如く、カルメンの瞳に頬に唇に蘇る女性の柔かさ。

そしてグスタボもまた 心で女性を愛することの真実を知るようになり どんどんカルメンに惹かれていきます。

さて気になるドラマの着地点ですが・・。

全てを知ってしまったグスタボの驚愕、失意、混乱、暴走に比べると カルメンの強いこと、大きいこと!!

女は強し・・だけでは済まされないカルメンの真意は 彼女のラストのセリフ「そんなに悪い結末じゃない」・・、この言葉に集約されるのかもしれません。

それにしてもこの力強さはいったい何なんだ? と、この言葉の意味するものに思いを馳せずにいられません。

ガエル・ガルシア・ベルナルの子犬が甘えるような瞳に釘付けになりながら 衝撃作と言えるこの作品も カルメンの胸で眠るグスタボ(ガエル)が 母の胸で安心しきって身を委ねている子供のように見えたことを思い出し、胸を締め付けられるような切なさでいっぱいになるのでした。

セシリア・ロスの毅然とした表情がとても好きな私は 「オール・アバウト・マイ・マザー」の彼女といい、この作品といい、女の特に母性の逞しさを演じる力量に感動すらしてしまうのです。
 

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