題名のない子守唄題名のない子守唄
(2008/05/30)
ピエラ・デッリ・エスポスティクラウディア・ジュリーニ

商品詳細を見る

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
    マッシモ・デ・リタ
撮影:ファビオ・ザマリオン
音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:クセニア・ラパポルト
    ミケーレ・プラチド
    クラウディア・ジェリーニ
    ピエラ・デッリ・
    アレッサンドロ・ヘイベル
    クララ・ドッセーナ
    アンヘラ・モリーナ
    ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ

ウツクライナから北イタリアのトリエステの街にやって来た謎の女性イレーナ。
彼女はある家族に巧みに近付き、首尾よくメイドとして雇われる。
そして、その家の4歳の娘テアの子守も任され、次第に信頼を勝ち得ていくが、ある日、彼女の忌まわしい過去に関る男が彼女を追ってトリエステの街にやって来る・・。


冒頭から終盤近くまでは 謎に満ちたサスペンスでグイグイひっぱりながら、しかし観終ってみると 一人の女性の過酷な運命に哀切を禁じ得ない作品です。
やはりジュゼッペ・トルナトーレ作品らしく、サスペンスの中にも人間味溢れた繊細な描写が随所に見られ、イレーナを通じて絆を求めて彷徨い続ける母性の何たるかを 同じ女性として改めて問わずにはいられませんでした。

この作品はネタバレ不可なんですね。
それを配慮して書き綴ろうと思いますが 監督が拘ったネタバレはラストの僅かな部分と信じつつ、白文字も駆使してみます。

トリエステの街に来たイレーナの謎の行動が進行する中で、数々のフラッシュバックに映し出される彼女の過去の衝撃的なシーンから その素性が徐々に解き明かされていく演出です。

これらがこの作品を単にミステリアスなサスペンスドラマに終わらせずに、濃厚で芳醇な香りが漂う人間ドラマに仕立て上げています。

自国ウクライナで娼婦として過ごした過酷な日々。
イレーナは自分にまとわり付く黒カビ男を振り切って ある目的を持ってトリエステの街に辿り着きます。
(黒カビ男とは:娼婦の稼ぎ、取引を仕切り、イレーナに過酷な仕事を強いる男であり愛人でもある。)

そこから始まる彼女の行動には強い信念を感じます。
何が彼女をそこまで大胆な行動に駆り立てているのか、目指すアダケル家の住むアパートの真向かいに部屋を借り、メイドとしてその家に入り込むために様々に他人を騙し、犠牲にしても目的を達成させようとする。
その彼女の深く思い詰めた気持ちこそ、この作品のテーマにも関る大事な部分です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【以下、ややネタバレ】

やがて 彼女の最大の目的はアダケル家の4歳になる娘テアだと言う事が分ります。

イレーナにとってテアとはどういう存在なのか・・。

アダケル夫妻の信頼を獲得したイレーナは テアの持つ障害を克服させるためにこ 僅か4歳の幼子には酷過ぎると思えるほどに厳しく接します。

そこにイレーナのどんな気持ちが隠されているのか・・。
  
その間にも絶え間なくフラッシュバックのように挿入されるシーンから テアとは??という疑問も解き明かされていきます。


【限りなくネタバレに近いです】

結局、イレーナの不審な行動から 彼女の素性がバレたり またウクライナ時代の疫病神ともいうべき黒カビ男が出現することで イレーナはもちろんアダケル家にも災いが生じてしまう。

そして、彼女の強い願いが招いた結果は 意外な結末を迎えます。

娼婦であり、人身売買のための妊娠、そんな中でイレーナのたった一つの純愛の結果がテアだと信じたことから始まった悲劇の数々。

そのイレーナの思い込みも 実はDNA鑑定の結果・・。

更に その後に残す余韻はイレーナの120%の哀しみの渦の中に たった一粒の小さな小石を投げいれた時に広がる小さな小さな安らぎの波紋が広がるような印象があって心救われます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最初からフラッシュバックの多用に戸惑いながら その中に描き出された小さな出来事がピースワークのように繋がり、全貌が見え、そして彼女のとった行動とそれらが結びついた後の結果を知った時、思わず「不条理」という言葉が頭を過ぎります。

哀れなイレーナ・・。
彼女の生きてきた過去が過酷であればあるほど、その母性が一際際立って見えるけれど この結末により母性のある種の拘りから解き放たれた来たるべき彼女の未来には 本当の愛情の温もりの予感があって その余韻がうれしい。

イタリア映画と言えば巨匠エンニオ・モリコーネの哀愁漂う音楽。
それがエモーショナルに観る者の感情を盛り上げます。
イタリア映画賞の最高峰ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞をはじめ5部門で受賞を果たした秀作です。


ネタバレ出来ない鬱憤を晴らすために最後に一言・・(苦笑)

ラスト前の あのオチは酷すぎます・・。
あの黒カビ男のペンダントの裏の文字、それが全ての発端だったなんて、イレーナも気の毒の2乗、3乗どころじゃないです。
アダケル家の元家政婦にしても アダケル夫人にしても そしてテアちゃんもね、気の毒過ぎます。(ボソ)
何より、イレーナは何のためにここまで思い詰めて行動したのよ〜、全く!(^^;)


テーマ : 映画感想 - ジャンル : 映画

 

<< 不完全なふたり | Home | ONCE ダブリンの街角で >>

コメント

おはよーございます〜

ポルカさん、コメントありがとうございます。
>おすぎの「穴から見る目が怖いのよ〜」というコメントにひかれて(笑)
おすぎさん、そんなコメントをしていたなんて知りませんでした。
ていうか、知らなくてよかった・・、聞いていたら 観ていなかったかもしれませんから(~_~メ)
オチを知れば知るほど、いったい何だったのか・・とイレーナの母性が哀れで仕方ありませんね。
でもトルナトーレ監督作品の雰囲気は大好き!
次回作も期待したいですね〜〜。

「レミング」楽しいでしょう?怖いでしょう?謎でしょう?(笑)
こちらも↑の作品とは別の意味で 何なのよー!?と思いますよね。
なるほど!!(膝を打つ)、そっかー、あの最初のシーンの遠隔操作の機械ね、あれに何か秘密があるのかもしれませんね〜〜
ポルカさん、すごいっっ! 着目点に感心しましたよ!

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「つぐない」、オスカーでも話題でしたよね。
両方とも見逃してしまって本当に残念です。
DVDで鑑賞しますので またその時は話に付き合って下さいネ(^^ゞ)
「胡同の理髪師」は知りませんでした。
中国映画でしょうか? ちょっと調べてきますね。
こちらこそ、また面白い作品があったら 是非教えて下さいネ。
「素粒子」系なんて 特に好きです〜(笑)

観てます

カポさん、こんにちは〜。
おすぎの「穴から見る目が怖いのよ〜」というコメントにひかれて(笑)以前近くのミニシアターで観ました。
家政婦の事件とかフラッシュバックとか、衝撃と謎をあたえながらの演出がうまいですよね〜
ラストは私もカポさんとおんなじ気持ち。

以前お薦めいただいた「レミング」あの後わりとすぐに観ちゃいました♪
面白かったです!ランプリングさん怖すぎ@@
「遠隔操作」(どこから〜怖い怖い)って言葉が思い浮かんだんですよ〜あの丸いカメラにかけてるのかな〜
レミング、おっきいドブネズミみたいなのを想像してたのですが、なんとかわゆいではありませんか(笑)
また何かお薦めありましたらよろしくお願いします^^

劇場では「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「つぐない」を観ましたよ〜♪
あと地味映画これはお薦めなのですが、「胡同の理髪師」
93歳の理髪師チンさんの日常を淡々と描いたドキュメンタリータッチの映画です。
若干睡魔がくるかもしれませんが(笑)こんなふうに晩年を送れたら理想だな〜って思いました。
胡同の町もどこか懐かしくてよいですよ〜^^

ひたすら待っていました・・。

ゆーこぽん♪が劇場で鑑賞された日から 随分と月日が流れた気がします。
実際に7ヶ月も待ったのよね〜〜涙
でも待った甲斐のある作品でした!!
これを劇場鑑賞してからの帰路は 本当にどんよりした気分になるでしょうねぇ〜〜
「自分の脂肪以上に重い・・」分ります、私もよん(笑)
そう思うと おうちでDVDで正解だったかもしれませんね。

「ゆりかごを揺らす手」は もちろんヒロインの悲しみや憎しみもよ〜く理解出来るけど やっぱりハリウッド製?
観客を脅かそうとする方がメインだったような気がしちゃうのよね。
その点、トルナトーレは凄い!!(笑)
フラッシュバックは過激だけど 過激さの中に人間ドラマがしっかりあったものね〜〜

コメントありがとうございました。
また何かお薦めがあったら是非教えてね。
ていうか、多分同じもの観ているよね(笑)

さすがのトルナトーレ!

この映画はギリギリで劇場で観ることが出来たのですが、帰りの電車の中、ズーーーーーーンと重石を自分の脂肪以上に抱えて重〜〜〜く帰宅したことを思い出しましたw

さすがはトルナトーレ監督とは思うけど、一筋縄じゃいかないとはいえ、あまりにイレーナにとっては酷過ぎっ!!!
特にペンダントの事は愕然としてしまったわよ。


最初の頃、イレーナの過去が段々解ってきて、理由は解らないにしても『ゆりかごを揺らす手』だと思う要素な展開部分までは本当に面白かったけど、後半の社会派な部分はとっても辛かったですよねぇ。

それだけに最後の最後に涙が止まらなくなったんだけど。

そういえば『ゆりかごを揺らす手』が再販されているみたい。
こちらも久々に見てみたいわ。

コメントの投稿

URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 BLOG TOP