![]() | 不完全なふたり (2008/02/08) ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ 商品詳細を見る |
監督:諏訪敦彦
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
音楽:鈴木治行
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ブリュノ・トデスキーニ
ナタリー・ブトゥフ
ジョアンナ・プレイス
ジャック・ドワイヨン ジャ
アレックス・デスカス
結婚15年目、離婚を決めたマリーとニコラは友人の結婚式に出席する為にパリを訪れる。
周囲からは理想的なカップルと見られていた二人だが、パリでの滞在期間でも二人のすれ違った心は互いを傷付合う。
このまま別れてしまった方がいいのか・・、様々な想いが二人の間で錯綜する。
一組の夫婦の別れ際のモヤモヤした感情の行き違いを まるでドキュメンタリーで観ているような印象の作品でした。
それもそのはず、殆どのシーンが即興で綴られた物語だそうです。
「即興で!?」と驚くと同時に 説明的なセリフや背景が無いにも関らず、特にマリーの場合など 彼女の表情一つで彼女の不安や悲しみも自らの空想力で補って余りあるパワーを持っていることに気付かされます。
諏訪監督自身、フランス語に堪能ではないとのこと。
これもまた非常に驚きですが 彼の撮影現場での役目はフランス社会を熟知したスタッフや俳優たちに一つのテーマを提示し、それに対する様々なリアクションを引き出す触媒に過ぎなかったと言います。
なるほど、私がこの作品に感情移入出来た理由は監督のその説明の中にあるのだと思います。
【ネタバレしています】
実は私、「不完全なふたり」というタイトルに、所詮夫婦ってそういうのもなんじゃないの?という思いを持ちながら、この作品を観始めました。(苦笑)
熱愛中の恋人同士だろうが、「今が最高!」の新婚カップルだろうが、酸いも甘いも知り尽くした狸の化かし合い?の熟年カップルだろうが この世に完璧な人間が存在しないのと同じように(存在するならゴメンナサイ!)、違った個性を持った二人がカップルである限り、「不完全なふたり」であることが本来の夫婦の姿でしょう・・と思っていました。(←違うかな?汗)
だから お互いの気持ちのすれ違いにイライラしているマリーとニコラを観ながら、早く別れてしまった方がお互いの為にには健全かもしれないと思う気持ちと、離婚を決めたという割りには お互いにどこかで修復に対しての未練をチラつかせる様子も垣間見えるし 白黒はっきりしないラストを迎えるフランス映画が多い中、諏訪監督はどんな結末を見せてくれるのか楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。
特にマリーは情緒不安定気味で、何かにつけては涙がこぼれる・・。
理屈で問いただすニコラに対して、言葉が溢れる感情を補う事の出来ないマリーの気持ちが痛いほど伝わってくる。
そんなマリーの言葉にならない言葉を理解することが出来ないニコラの苛立ちも分らないではないのです。
仮に既に二人の関係をキッパリ割り切ってしまった二人なら こんなシーンは生まれないはずですもの、そうでしょう?(←誰かに同意して欲しいらしい)
パリでマリーとニコラを囲む友人たちが離婚に反対し、心配し、慰める中で この二人は徐々にではあるけれど 表現の方法は違っても修復の糸を探っている気配が見えてきます。
その後の物語の推移を観ていても 二人に本当に別れる理由があったのか疑問に思えてきます。
どちらかが浮気をしたとか?そういう具体的な匂いがしてこない二人なんです。
何か些細なこと、それも小さなボタンの掛け違い程度の出来事はあったかもしれない、どこの夫婦にもあるように。
それらの積み重ねでどちらかの気持ちがある日爆発して、また相手もそれに乗ってしまった・・、ただそれだけの事のような気がしてならないのです。
脚本の中に具体的な夫婦像が無かったそうで 主演のヴァレリアとブリュノが作り上げた漠然とした夫婦の歴史の中から生まれた彼らの演技です。
だから観客も自由に想像を羽ばたかせることが出来る訳です。
結局は愛し合っているのに それを認め合うタイミングがほんの少しずれてしまい、お互いにそれを元に戻すタイミングを探り合っている感じ。
それを邪魔しているものは 互いのプライドと心の疲れだけだと思えてきます。
美術館で 手を絡ませる彫刻や 男女の柔らかな融合の彫刻を鑑賞するマリー。
知人の女性と一線を越えることもなかったニコラ。
もし二人がパリに来なければ 彼らの気持ちに優しさも柔かさも戻らずに終わっていたかもしれないと思わせるシーンです。
ラストシーンも 諏訪監督のアドバイスや主演の二人の撮影中の思いが詰まった素晴らしいものです。
明るい未来とか、元の夫婦の気持ちに戻れたとか・・、もちろんそういう意味もあるけれど ある種、二人は一つの厳しい選択をしたとも言えます。
やり直すことは初めてのスタートよりもエネルギーが要るものです。
汽車の出発するまでの僅かな時間に迫られた決断・・、これこそ心を研ぎ澄まし、自分の心の中の真実を見極める究極の決断の時です。
二人の今後に穏やかな時間が流れるますように・・。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキさん、大好きな才能溢れる女優です。
演技力も美貌もそして知性にも溢れた女性。
過去のフランス映画祭で、バスローブのままの彼女にエレベーターで遭遇したことは忘れられません。
スッピンでも本当に綺麗でした。
諏訪監督は、この作品により大絶賛されていますね。
カイエ・デュ・シネマ では「演出における現代の冒険を受け継ぐ諏訪敦彦は、ロッセリーニ、ゴダール、ガレルの後を辿りつつも、演出を再創造する。」とまで。
「パリ・ジュテーム」のジュリエット・ビノシュのエピソードも女性の哀しみを見事に描いていました。
言葉のコミュニケーショーンを超えた見事な演出。
これからの作品にも注目したい監督です。
